健康相談

最近の便秘診療に関して

今回は慢性便秘の治療に関して、お伝えいたします。

便秘症の定義

そもそも便秘とはどのような状態のことを言うのか。「慢性便秘症診療ガイドライン」では、便秘の定義を“本来体外に排出すべき糞便を十分量、かつ快適に排出出来ない状態”とし、便秘症の定義を“便秘による症状が現れ、検査や治療を必要とする場合”としてます。慢性便秘を原因から器質性・機能性に、症状から排便回数減少型・排便困難型に、病態から大腸通過正常型・大腸通過遅延型・便排出障害に分類しております。

便秘の中には大腸がんなどによる器質性の通過障害が原因となっており、便秘が気になる場合は少なくとも一度は精査をしたほうがよいと考えますが、通常クリニックで扱う便秘症は機能性の慢性便秘です。

いままでの便秘治療

これまでの便秘治療は塩類下剤(酸化マグネシウム)と刺激性下剤(センノシド等)による治療が中心でした。従来の治療法で改善していれば良いのですが、実臨床での経験を申し上げますと酸化マグネシウムで便を柔らかくしても中々便秘が改善せず、刺激性下剤を使用し続け、そのうち刺激性下剤を使わないと排便が行われないという状態の方がほとんどでした。それで解決している間はいいのですが、刺激性下剤は徐々に効果が薄まってくるという副作用がありいつ薬が効かなくなるのか、効かなくなったらどうしたらいいのか、、、、。といった状態で診療をしておりました。

新規便秘治療薬の出現

2012年に新規便秘治療薬のアミティーザが発売されて以降、グーフィス、リンゼス、モビコール配合内用剤と現在では機序が異なる4つの薬が使用可能となりました。それぞれの内服薬の機序は以下の通りとなっております。

アミティーザ(ルビプロストン:粘膜上皮機能変容薬の一つである。機能性脂肪酸化物で小腸粘膜上皮のCIC-2クロライドチャンネルを活性化し、小腸腸管内腔へのクロライド輸送により浸透圧を生じさせ、腸管内腔への水分分泌を促進することにより便を軟らかくし、腸管内の便輸送を高めることで排便を促し、自発的排便の改善に有用とされている。ルビプロストンは小腸通過時間の改善がみられ、血清中の電解質には影響を与えないとされている。高齢者の重症便秘への有効性が高い。副作用として悪心・下痢が、また、妊婦・妊娠の可能性のある女性に対しては投与禁忌である。→まとめると 腸管内の水分量を増やし自然な排便を促す。

グーフィス(エロビキシバット:回腸末端部の上皮細胞にある胆汁酸トランスポーターを阻害し、胆汁酸の再吸収を抑制することにより大腸管腔内に流入する胆汁酸量を増やす。増加した胆汁酸は消化管運動を促進し、大腸内で水分を腸管内に分泌させ、直腸においては進展刺激に対して知覚閾値を低下させ便意発現効果をもたらす、などにより便秘を改善するとされている。主な副作用は腹痛・下痢であった。→胆汁を大腸に残すことで排便を促す。便を柔らかくしかつ排便刺激を促す。

リンゼス(リナクロチド):小腸粘膜上皮のグアニル酸シクラーゼC受容体アゴニストで、グアニル酸シクラーゼC受容体の刺激を介して腸管上皮細胞のcGMP量を増加させ、これにより消化管知覚過敏を改善、腸管への水分分泌促進作用により自発排便と腹痛の有意な改善が得られ、便秘型過敏性腸症に有効とされている。副作用としては下痢が最も多く報告されている。

モビコール配合内用剤(ポリエチレングリコール):浸透圧の差を利用して便中水分量が増加することで便が軟化し便容責が増大して大腸を刺激し、蠕動運動が活発になって排便が促される。塩類下剤と異なり電解質異常を引き起こすことなく、体内にも吸収されないため安全性が高いとされている。→安全に使用可能な酸化マグネシウムの代替え薬

実際の使用経験

外来で、従来の治療法で排便の改善が見られない場合はわたくしはグーフィスを使用することが多いです。特に食事がしっかり取れる方にはグーフィスがよい印象があります。グーフィスは10㎎からが常用量ですが、腹痛の副作用を訴えられる方が多いため5㎎から処方することが多いです。長年1週間に1回程度しか排便を認めていなかった40代の女性でこの薬を内服し毎日排便を認めた方など、比較的反応がよい印象の薬です。朝内服し昼頃トイレに行くといったパターンが多かったです。仕事の内容などで昼のトイレが難しい方では内服時間を変えて対応をしております。

グーフィスがあまり効果ない、または腹痛などの副作用が強い場合はアミティーザ、リンゼスを組み合わせたり処方変更し対応しております。

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