健康相談

新型コロナワクチンについて

日本でも新型コロナワクチンの接種が徐々に広がっていますが、今回は新型コロナワクチンとはどういったものなのか述べたいと思います。

現在世界で開発されているワクチン、日本で承認されているワクチン

様々な種類のワクチンが現在開発されています。日本で使用されているワクチンはファイザー社製のmRNAワクチンですがそれ以外にもいろいろな種類のワクチンが開発され、現在臨床試験を行っています。日本でも2021/5/21に新たにワクチンが承認されました(2021/5/29内容を更新しました。)

ワクチンタイプワクチン名開発企業現状
mRNAワクチンBNT162b2米ファイザー/独ビオンテック日本において承認済み
mRNA-1222米モデルナ日本において承認済み
ウィルスベクターワクチンAZD1222米アストラゼネカ日本において承認済み
Ad26.COV2.S米 ジョンソンアンドジョンソン第Ⅲ相試験中
Ad5-nCorV中 カンシノ・バイオロジクス第Ⅲ相試験中
不活化ワクチンCoronaVac中 シノファーム第Ⅲ相試験中
組み換えタンパク質ワクチンNVX-CoV2373米 ノババックス第Ⅲ相試験中

mRNAとは

現在日本で使用しているワクチンはファイザー社のmRNA(メッセンジャーアールエヌエーと読みます)ワクチンです。先日私も接種いたしました。mRNAはDNAからタンパク質を作るのに必要な情報のみをコピーして取り出されたタンパク質を作る為の鋳型となる物質です。細胞核が人体構成情報を保管している大きな図書館でDNAが膨大な書物だとすると、mRNAは必要な書物の必要なページをコピーしてできたプリント用紙のようなものです。そのプリント用紙をもとにタンパク質を作成します。タンパク質を作成するためには図書館から出て専用の部屋、細胞質に行き作成いたします。タンパク質作成後はそのプリントは用済みなのですぐ分解されてしまいます。

mRNAはとても不安定

mRNAはとても不安定は物質で、すぐに分解されてしまいます。そのためmRNAをワクチンとして使用するためには様々な工夫をして長年技術開発がされてきた中で今回世界的に新型コロナワクチンが流行したことで研究費、ニーズ、世界的な技術の醸成、等が相まってmRNAワクチンの臨床応用が実現しました。新型コロナmRNAワクチンはインフルエンザワクチンとは違い保存方法が厳格で、ー80度での管理が必要です。つまりとても不安定な物質なのです。

mRNAはDNAには影響を与えない

基本的にmRNAは細胞質でタンパク質合成に利用されるのみであり、核内のDNAには影響を与えることはありません。将来的に現在予期せぬ副作用が出現する可能性もありますが、現状の新型コロナの流行と感染した場合の重症化のリスクを考えると打つ利点が大きく上回っているといえます。

インフルエンザワクチン等よりも効果が高い

またこのワクチンは接種されたヒトの細胞質で抗原タンパクを作成し免疫を誘導するため、中和抗体のみでなく細胞障害性のT細胞免疫を誘導します。つまり感染予防効果も発揮します。従来のインフルエンザワクチンはタンパク質を直接投与していたので中和抗体のみしか誘導できず、体内に入ってきたウィルスにしか攻撃できず、感染予防効果はほぼありませんでした。しかし、この新型ワクチンは感染予防効果も高いのです。その予防効果は打たない場合と比較して95%感染を減らすことができます。

強い副反応。というか免疫を誘導するために強い反応が出ている。

誘導される免疫が強いため、というより、強い免疫を誘導するためにそれ相応の反応が見られます。接種部位は腫れ、接種翌日には熱が出る場合が多いです。私も特に2回目の接種後軽度の発熱がありました。これは免疫を誘導するために必要な反応であり、このような強い反応が出るということは明らかにこれまでのワクチンよりも効果的で確実な免疫が作られている証でもあります。個人的には非常に効果的なワクチンであると考えております。

日本のワクチン接種は世界的にとても遅い。それは悪いことばかりでもない?

日本は世界でも接種を行うのがとても遅く、ワクチン接種達成度は先進7か国の中で最下位というだけでなく世界でも100番目という低い順位に位置しております。これは悪い面ばかりではなく各国で沢山の人々がワクチン接種を行った結果を元により安全な情報の元接種することができるという点では非常に素晴らしいことです。今後徐々に日本各地でワクチン接種者数が増えていきます。それに伴いコロナ感染症も徐々にコントロールされ以前のような日常が取り戻される日が必ず来ると思います。その日を迎えられるよう当院も微力ながら皆様の力になれるよう日々診療を続けていきます。

参考文献 日医雑誌 2021年5月号 COVID-19ワクチンの開発

     厚生労働省ホームページ

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